絵本がもたらす”魔法の効果”

4.言葉の能力を育んでくれる。

沢山の絵本と親しむことによって、言葉の能力は向上します。これは自分の体験から事実だと思います。(この体験については前に書いたのでよかったら読んでみてください。⇒)ただ、その理由について考えるのは難しい!でもなんとか頑張って分析してみました。

−イメージ(絵)を背景に持った言葉は力強い

絵本の言葉は、とても力強く読む人の心にスッと入ってきます。それは、言葉の背景にいつもイメージ(絵)が添えられているからです。”百聞は一見にしかず”ということわざがありますね。人間、聞いただけではなかなか実感できないから、実際に見て体験するのが一番だという意味です。例えばママやパパの育児の経験を考えてみると、妊娠中に沢山の育児書を読んだり、先輩ママから経験談を聞いていても、実際に出産して子育てが始まってみると分からないことだらけ!結局は経験したあと仕入れた知識の方がよっぽど役立ったり。(事前に勉強するのは楽しいことですし、もちろん大切です!)つまり言葉は、読む人が言語外にそれに関連するイメージを持つことによって初めて、読む人の心に強く訴えることが出来るのです。絵本の言葉が力強いのは、視覚イメージと補い合うことによって微妙なニュアンスを自在に臨場感をもって表現できるからです。それは経験や知識が少ない子供の心情にも強く響きます。

−繰り返しによってはじめて伸びる言葉の能力

子供の言葉の成長は眼に見えるものではありません。就学前の読み書きが出来ない子供にはテストで図る機会もありませんから。でもそれは小さな言語体験の積み重ねで着実に成長するものです。例えば大人でも外国語学習の過程で実感出来ることですが、言葉の単語や言い回しは繰り返し聞いたり発音・発話することで初めて自分の語彙として安定して取り入れられます。同じように絵本の言葉は繰り返し読んでもらったり自分でも真似して口ずさんだりすることによって初めて語彙として定着し、子供の言葉の能力を育むことが出来るのです。3,4歳の子供でも絵本で馴染んだ表現のニュアンスを上手につかんで、日常生活で使いまわしたりします。そういう能力は、大人よりも幼児の方がよっぽど高いかもしれませんね。

−子供のレベルに合わせた絵本選びが必要

ただし、子供の言葉の能力を伸ばし続ける為に、もう一つ大切なことはママやパパが子供の成長を観察しながら、その成長レベルに合わせた絵本を探してやることです。せっかく子供が絵本好きでも語彙やストーリーのレベルが同じような絵本ばかりでは沢山読んでやっても成長は鈍ってしまうでしょう。このテーマは、別に「絵本の選択についての工夫」というコーナーで詳しく取り上げる予定です。

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 2.感情を豊かにしてくれる⇒
 3.想像力を育んでくれる⇒
 5.感性を磨いてくれる。⇒
 6.好奇心を育ててくれる。⇒
 7.追求心を育ててくれる。⇒
 8.洞察力と生きる力育ててくれる。⇒

【ご紹介=絵本(2,3歳〜)】『はじめてのおつかい』

あまりにも有名な絵本ですが、今回のテーマでセレクトしてみました。同名のテレビ番組が有名ですね。この絵本がヒットしてテレビ番組になったとか。子供はまるで自分で体験した気分になってしまうようです。うちの娘は丸覚えして何度も読んでくれました。

はじめてのおつかい(こどものとも傑作集)

はじめてのおつかい(こどものとも傑作集)

−番外編−ちょっとおまけ脳話

私は最近、脳研究の本に凝ってるので、おまけの番外編として今日のテーマと脳の関係について見てみましょう。皆さんは人間の大脳は左右に大きく分かれていて、右脳、左脳などと呼ばれるのは聞いたことがあるでしょうか?左脳は主に言語に関わる役割を、右脳は主に感覚に関わる役割を担いその間にある脳梁というもので結ばれて互いが作用しあいながら人間の思考は進められるようになっているそうです。不幸にしてこの脳梁が病気などで損傷してしまい左右脳の通信が出来ない状態に陥ってしまった人の発する言葉は、感覚の裏づけのない理屈だけとなり結局は意味をなさないとのことです。”机上(きじょう)の空論”などという言葉もありますが、言葉の力を過信して理屈を通すことにばかり拘っていては逆に言葉の意味は空(カラ)になってしまうのかもしれませんね。(参考:『ヒトはなぜことばを使えるのか』山鳥重(講談社新書))

【ご紹介=大人の本】『壊れた脳 生存する知』

30代という若さで二度の脳出血の為に脳を損傷し認識や言葉に障害を負った医師(著者)が、自分の体験から脳の不思議を追求しています。すごみのあるドキュメンタリーを読むと、脳の不思議はそのまま哲学でもあるような気さえしてきます。

壊れた脳 生存する知

壊れた脳 生存する知