癒しとしての絵本って?


最近絵本ブームとかで、絵本は大人の癒しとしていいとか、幼児教育としていいとか言いますけど、皆さんはこの”癒しとしての絵本”についてどう思いますか?

絵本って一口に言ってもいろいろありますよね〜。レベルも1,2歳向けのストーリーがあまりないものから、小学校低学年向けの読み応えのあるものまで。内容や設定も様々。ただ共通点としては、絵と文(ことば)のいわば統合メディアであるってことと、ある程度端的に分かり易く纏められているっていう点でしょうね。絵本はこの三つの要素によって一つのイメージを豊かに表現して受け手の心にスっと感じさせてくれますよね。完成度の高い絵や文は芸術性が高いものも多いのですが、絵本メディアなら普段は芸術に触れない生活をしている人も含めて、それこそ気付かないうちにすんなりと作家の高い感性に共感してたりする。・・・そういう面が大人の癒しとして注目されているのかなって思います。
あと絵本というメディアのもう一つの特徴は読み聞かせによる再現性です。声に出して読むことで、読み手と聞き手は時間と感情を共有します。いわば読み手は絵本に織り込まれた作家の魂が描き出す世界を引き出して再現し、聞き手とともにその蘇ったゾンビ(?)を共に味わうという。特に聞き手が子供で言葉を純粋に耳だけで味わう場合には、読み手側の感性が絵本の内包したものを十分に引き出すのに重要な役割を果たします。こういう面は音楽や舞台芸術とも同じといえるかもしれません。ただ、絵本の場合は演奏や演技といった技術が何もない人でも家庭でお手軽に再演できちゃうし、好きなだけ繰り返すもできます。絵本が読む者の心深く寄り添う癒し的存在になれるのはこういう訳なのでしょう。

[ご紹介=大人の本]

『絵本を抱えて 部屋のすみへ』江國香織
江國香織さんは子供の頃から絵本がとても好きだそうです。あの表現力は絵本で言葉の感性を磨いたのでしょうか。子供時代からの絵本体験・・・・ことばとシーンがないまぜになった記憶・・・をとても大切にしている気持ちがよく伝わります。

絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)

絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)

[ご紹介=絵本(5歳〜)]

『モチモチの木』斎藤隆介 文 滝平二郎 絵
斎藤隆介さんの作品には力強く劇的なストーリーが多いのですが、その特徴はストーリー展開以上にシーン表現力でしょう。一つのシーンの中で人物の微妙な感情の動きを巧みに描き出す文が絵本という形と最高にマッチします。この結実により読み手はまさに作家の”魂に触れる”ことが出来るでしょう。私が気に入っているのは『モチモチの木』と『三コ』です。『三コ』は文中に使われている用語のせいでしょうか、絶版になっているのが残念です。

モチモチの木 (ビッグ・えほん)

モチモチの木 (ビッグ・えほん)

[ご紹介=絵本(4歳〜)]

『ちいなさミリーとイルカ』『ちいさなミリーとにじ』
スウェーデン(だったか?確か北欧です。手元に絵本があるのですが書いてない・・・)の作家の作品。パパとミリーという女の子の様子が(何故かママが登場しない家庭なのですが)微笑ましく描かれています。二人の会話のうちに家族愛が織り込まれています。作品ごとに微妙にミリーが成長していくのも楽しめます。大人向きとしてもオススメ。

ちいさなミリーとイルカ (大型絵本)

ちいさなミリーとイルカ (大型絵本)

ちいさなミリーとにじ (大型絵本)

ちいさなミリーとにじ (大型絵本)