絵本がもたらす”魔法の効果”

7.追求心を育てる


 −子供の論理力の発達


子供は4〜5歳になると時間の流れや空間の広がりをしっかり認識できるようになってきます。(これは絵本の効果とは関係なく、成長と共に自然に身についてくる能力です。)それまでは、大人を真似て”きのうは〜したよー”とか”きょうは〜したよー”としゃべっていても、よく聞いてみると入れ違えてしゃべったりしていたのが、徐々に過去−現在−未来の時間の流れを繋がった一つものとして捕らえられるようになるのです。空間についても同じように、自分が見えている範囲とその外側の場所とを一つの繋がった空間の広がりとして意識し始めます。


この時期までに培ってきた想像力や感性、言葉の能力などは、時間や空間の認識力の確立とともに論理力へと発展していきます。論理力とは、物事の因果関係や変化など抽象的なことがらを頭の中でイメージしながら理解し、自分でも筋道を組み立てて考える能力です。子供は様々な言語体験を通して、5歳〜6歳頃には論理力の基本は大人に近いレベルにまで達してきます。まだまだ複雑な論理の理解や知識量は大人に及ばなくとも、基礎から説明してもらいさえすれば大人の世界の知識を”分かる”ことができるようになるのです。この論理力に加えて、自分を囲む世界の様々な情報について理解してみたいという追求心が備われば、本格的な”知”の世界へ踏み入る準備が整う時期と言えるでしょう。


 −知識絵本が追求心を育てる


小学校に入ってしまうと勉強はどうしても義務的になり、学習範囲はそれぞれの子供達が本当に知りたいと思うこととは一致しないことも多いでしょう。またテストの点数競争など好奇心以外の動機も出てきたりすると、子供達は本来の学習の動機であるべき”知ることの純粋な楽しさ”を忘れてしまいがちです。これは現代日本の学校制度がしばしば子供の学習意欲を削いでしまい、それが学力低下問題の原因のなってしまっていることでも明らかです。

絵本の中には、基礎的な科学や歴史や社会の仕組みについての知識を子供でも分かるストーリー仕立てで楽しく説明したものがたくさんあります。その多くは子供の好奇心を引き出す為に、身近な出来事との結びつきから始まって深く追求していくストーリーです。これら知識絵本が子供達に教えるのは知識そのもの以上に、学ぶ喜びや追求する楽しさです。ママやパパは小学校入学前にこそ是非、知識絵本の読み聞かせに取り入れらたいいと思います。さらに絵本から得た知識について日常生活でも語り合うことによって、子供達は様々な情報に対してアンテナをを広げていく知識欲と追求心が育てることが出来るでしょう。


【ご紹介=絵本(5歳〜)】『すってはいてよいくうき』かこさとし
からだの本シリーズの一つ。このシリーズは、人間の体のことが子供にも理解出来るように書かれています。作者かこさとしさんは、科学などの多くの知識絵本を執筆されていている。講演会を拝聴したが、高齢でも童心を忘れない姿勢。子供の純粋な好奇心を深く理解されているのでしょう。

すってはいてよいくうき (かこさとし からだの本)

すってはいてよいくうき (かこさとし からだの本)


【ご紹介=絵本(5歳〜)】『じどうしゃのはじまり』
はじまりの物語シリーズの一つ。このシリーズは絶版なので図書館でしか見られないが、電車や自動車などの発明の物語が子供にも理解出来るように書かれていて楽しい。

じどうしゃのはじまり (チャイルド絵本館―はじまりの物語)

じどうしゃのはじまり (チャイルド絵本館―はじまりの物語)

【番外編=子供にとってのファンタジーと科学知識】


子供はファンタジー(空想)の世界を本気で信じることができます。クリスマスイヴにサンタさんを本気で待つ様子を見れば分かるでしょう。空想世界にどっぷり入り込む子供の視点は、大人がファンタジー小説などを楽しむのとは一線を画しているような気がします。
空想好きの幼児期のうちから、子供に科学知識を教えることについては賛否両論あるようです。これに関して私が娘の様子をみて感じるのは、幼児にとっては科学知識もファンタジーの一種として楽しめてしまうということです。そもそも宇宙や地球や生物などに関する抽象的な科学知識は、想像力豊かな科学者が物理的世界とファンタジーを結びつけて作り出した空想の産物なのです。この科学のルーツを想像力豊かな子供はリアルに楽しむことが出来ます。ただ注意したいのは、雑学的に知識だけを教えこんでしまうと科学の冷めた部分だけを取り込んでしまうことになり兼ねません。是非、発明者や発見者の思いを伝える夢のある知識絵本を選びたいですね。


【ご紹介=絵本(5歳〜)】『ウエズレーの国』
友達がいなかったウエズレー少年が、一つの発明(?)を通して子供の文明を作りあげる空想物語。科学とファンタジーの世界の類似性をそのまま絵本にしたようなストーリー。

ウエズレーの国

ウエズレーの国